巨人アマゾンの弱点突く、生産者たちの「不売運動」
皆さん、こんにちは。8月25日の日経新聞に次のような記事が掲載されていました。
米高級スーパー、ホールフーズ・マーケットの株主総会で米アマゾン・ドット・コムによる買収が承認され、米連邦取引委員会(FTC)も認可した。米国だけでも8千億ドル(約87兆円)と言われる生鮮品市場で、インターネット販売はまだ5%程度。アマゾンはついにその生鮮販売に本格参入する。消費者には便利なネット販売だが、生産者はアマゾンの参入を脅威に感じ、一部では「不売運動」さえ始まっている。
「あんたらも上場が近づいたら規模と利益の追求に走るんじゃないのか」。生鮮食品のネット通販ベンチャー、米グッドエッグのベントレー・ホール最高経営責任者(CEO)は参加者の厳しい追及に苦笑しながら「心を失わずに成長できる」と答えた。
同社が「心」というのは顧客との接点と品質基準を重視する姿勢のことだ。同社の配送の8割は自社の社員が担う。非効率だが、配達先の顧客との軒先での会話も推奨している。味と生産者側の品質管理水準を考慮し、基準を満たす商品だけを仕入れる。小規模ながら生鮮食品のセレクト通販ショップとして、アマゾンとすみ分けることに成功している。
「米国の食品価格は相対的に高い。だが、次世代の農家を育てるには一定の利益が必要だ」。グッドエッグに製品を供給する地元の有力な乳製品生産者ストラウス・ファミリー・クリーマリーの創業者アルバート・ストラウスCEOは、アマゾンの勢力拡大で規模を武器にした値下げ圧力が強まるのを警戒する。
だが、アマゾンの存在は生産者にとって悪いことばかりではない。アマゾンは自社で製品をネット販売・配送するだけでなく、メーカーへの物流運用・配送の受託も手掛けている。生鮮品でもホールフーズを倉庫のように使い、冷蔵棚を生産者に貸し出し、配送もする受託サービスを始める可能性が高い。生産者が物流・販売は専門家のアマゾンに任せ、得意な生産に集中できる仕組みだ。
「興味深い仕組みではある。だが、サイト上で単に価格で比較されるだけなら過当競争による値下げ圧力に巻き込まれる」とストラウス氏は首を振る。利便性や機能性を追求するアマゾンのシンプルなサービス画面上では、生産者側が食文化の価値などをアピールし、最低限維持したい価格水準を消費者に納得してもらうことは難しい。
強固な地域共同体を持つカリフォルニアの生産者の間では、草の根的な「アマゾン不売運動」が静かに広がっている。アマゾンでは買えない生鮮食品を集めたネット市場も一定程度残る可能性が高そうだ。
米サンフランシスコ近郊、ウオールナッツ・クリークでは巨大なショッピングモールの中にアマゾンの書店が今年中に開店する予定だ。街にただ一つ残った独立系書店スワンズ・ファイン・ブックスで影響を尋ねると店主ローレル・スワンさんは笑顔でこう答えた。
「本という商品への関心が高まる意味でアマゾンの出店は歓迎している。生き残った書店とアマゾンとの間では明確にすみ分けができた。書籍を買う行為の利便性を高めたアマゾンに対し、我々は古書中心の趣味・嗜好の世界に生きる。ネットで見つけにくいものを店で手にとって探し、会話を楽しむ消費者は必ず残る」。
こういった現象は、ネット通販業界だけの話ではなく、多くの業種の間でも問題となっております。
某大型ショッピングモールが周辺に出来たおかげで、その地域周辺の商店街はダメになり店を畳まなければいけない状況になってしまった、また大型家電量販店が出来、町の電気屋さんも店を畳むことになったなど、よく聞く話です。
消費者にとって上記の様な大型のショッピングモールや家電量販店は、非常に便利で一度に色々買い物が出来、全てを一カ所で済ますことができる、またフードコートやレジャー施設も併設しているモールもあるので一日そこで遊べてしまうので消費者の方はどうしても、商店街ではなくそういった大型ショッピングモールへ足を運んでしまいます。
しかし、そういったなかでも商店街のお店同士で知恵を絞り、大型ショッピングモールでは出来ない、商店街ならではのサービスを提供し、成功しているところもあるようです。
ネット通販の業界もそうですが、大型店とローカル店を比べるのではなく、それぞれの長所を活かした販売方法を確立し、うまく共存し合える環境を作り出していくことが非常に大切ではないでしょうか。
そうすることによって上記で述べられている書店のように、それぞれの顧客の住み分けも可能になるはずです。
今後も更に、資本を持っている大きな企業が有利になっていくでしょう。しかし、どの業界でもそうですが必ず大手企業では提供できないニッチなサービスの部分が生まれてきます。
そうした部分を逃さず、消費者の期待に応えられるような企業は今後も生き残り、成長していける企業ではないでしょうか。